098632 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

蝉時雨

むかしばなし

すんごい好きだった。


そんな自分がいやでたまらなくって
あるときふと、酸が物質を溶かしきるように
私自身が跡形もなく消えてなくなるゆめを見た。

内臓も血管も通う血さえ
全部なかったことになる日
私がこの世から消えると同時に
世界が終わるゆめをみたよ。


どんなにいやでつらくてくるしくても
人間は簡単に死ねない。そんなの知ってる

でもたしかに感じる
息をするたびに、じゅわ、と内部が発泡していくのを
自分の隣にいる度に、笑っている度に細胞が死んでいく
ふかくてくらい海に溺れていくようにおそろしい

二人して泣いたことを覚えている
涙を見せなきゃ大人になれない子供だった
お互いを手放すのも掴すのもできずに泣いて
ごめんと手を振ってさよならしたんだ



(人を本気で好きになったことが、ある)
(人間は内的要因で死ねるんじゃないかと思ったことが、ある)



告白をしあったあの日
楽しく笑っていた日常には戻れないと思った
いつだって中途半端に拒んだのは、私だったね
本気で向き合いたいと、思ってはいたけれど


しょせん子供にはむりなはなしで


また出会うかもしれないあの人とは
しばしの小休憩を挟んで、またどこかで。
次会うまでに、良い人間に、お互いなっていればいい




© Rakuten Group, Inc.